炎上と消費者の意識
『恋×シンアイ彼女』というゲームが炎上中だという。
炎上の経緯について調べていくと、どうやらゲームのヒロインの一人である幼馴染のゲーム中での性格が、今回の火種となっていることがわかった。
彼女のシナリオを要約すると、以下のようになる。
かつて結婚の約束をし、自分の元を去った幼馴染を想う主人公。
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自分のクラスにその幼馴染が突然転向してくる。<物語スタート>
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<中略>なんやかんやあって結ばれる。
↓
が、唐突に幼馴染が主人公の元を去る。
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幼馴染は音楽家としての道を歩んでいたが、ある時期から長いスランプに陥っていた。
主人公と再び会うことで、スランプの脱却を図ろうとしていた。
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主人公と一旦は結ばれたことにより音楽的感性が蘇った幼馴染は、
無事音楽家への道へと戻っていったのである。
(一応個別ルートはここまで)↓
その後トゥルーEDにて、幼馴染は三度主人公の前に現れる。
二度と離れないことを誓うが、やっぱりその後また主人公のもとを去っていく。
しかも今度は「二度とあなたには合わない」という書き置きを残して。
↓
音楽に幼馴染を寝取られるストーリーに、ユーザー大激怒
まず、ゲーム界隈における炎上とは、一般的なSNSが炎上した時に起こるような
愉快犯的側面による伝播性・連鎖性は低い。
では、ゲームの炎上の燃料となりえるものはなにか。
答えは、消費者に対する信頼の裏切りなのだ。
そこで一つ疑問点。
『恋×シンアイ彼女』は、果たして費者の信頼を裏切ったのか?
まず、前提。
・公式が事前に”イチャラブ”を公言していた
”イチャラブ”とは、とにかく甘い日常生活を売りにした近年のエロゲーにおける謳い文句の一つ。
公式が公言したので、消費者は”イチャラブ”を求めて商品を購入する。
当然のように思える。
以前「最近はOP詐欺とか聞かなくなったな」みたいなポストをしたことがある。
とあるラノベ編集者によれば、
「最近の消費者は予定調和しか認められない傾向にある」とのことらしい。
つまり今の読者もしくはプレイヤーは、テンプレに則った単純な幸せしか受け入れることができなくなっている、ということだ。
それ、楽しいの?
いや、でも寅さんはそういった層が需要を支えていたし、「決まりごと」から外れない物語には安心感がある。
でも、かつてのエロゲーってそうだったっけ?
でか、エロゲーレベルにニッチな市場ですら、予定調和しか許されない世界になっていることに衝撃を受ける。
それなりの年月をプレイヤーとしてエロゲーを遊び、開発者としてエロゲーに携わったが、
そこに顕著に見えるのは、ユーザー側の質の低下である。
業界、作り手の質の低下を嘆く声もあるが、それは部分的には正しく部分的には間違っている。
ユーザー(消費者)のレベルが下がれば、作り手はそのレベルに合わせざるを得ないからだ。
ところで衰退の原因ってユーザーの知識の浅さとかに求められるのか。SFとか大繁栄するんか。よくわからん。
— 下倉バイオ =@ (@shimokura_vio) 2015, 11月 8
では、ユーザー(消費者)に求められる質とはなにか?
それは、今は多くの人が失っている、”物語”を求める前衛的な姿勢である。
消費者の期待を裏切る何か”が現れた時、すぐに炎上させてしまうSNS時代、ネットのインフラが整いすぎてしまった昨今、
物語が誰にでもわかりやすいテンプレな幸せしか望まれないとなると、
それはクリエイターにとっては非常に不幸であると言えよう。
消費者をも巻き込み牽引するような、かつてのような魅力ある業界に発展することを願うばかりである。